兵科・兵種・各部を解説します。
此處で使用する車輛圖像は、Virtual Kampfgruppe(all rights reserved by Blinda)掲載のものを畫像製作者Blinda様のご厚意のもとに引用しています。
軍需品の輸送と監視を任務とします。輕騎兵の一種ですが、装甲車輌は使用せず、専ら小廻りの利くオートバイやサイドカーに乗って、活躍します。
實際に輸送作業をするのは、武装の無い「輜重輸卒」という雑卒です。大型自働貨車を2名(運轉手と運轉助手)で運轉し、2臺の自働貨車に1名の武装したオートバイ「輜重兵」がつきます。半箇分隊だと、「輜重輸卒」が16、自働貨車8臺、「輜重兵一等卒」が4、「輜重兵上等兵」が2で、計22名となります。1箇分隊では、信號卒・看護卒を加えて46名です。他兵科の分隊の約3倍強の兵員がいます。したがって完全編成の輜重兵大隊は、歩兵の聯隊規模の兵員となります。一等卒でも部下に輸卒4名を持つので、頭のよい兵隊でなければ輜重兵は勤まりません。
各軍に「輜重兵大隊」が1箇あります。平時の大隊には輜重輸卒は訓練中の新兵が、ごくわずかしかいません。教育期間が短いので、1年分の徴兵者が何期かに分かれて交代で入營してくるからです。これが戰時編成になると、豫後備役の輜重輸卒を大量に召集して歩兵聯隊規模に膨れ上がり、さらに各部隊の行李・段列(輸送隊)や縦列(輸送中隊)に兵員を派遣します。
大量の軍需物資を輸送するのに、正規の「輸卒」だけでは足りないと、臨時に「補助輸卒」を雇うことがあります。いちおう軍人ではありますが、2週間くらいの訓練しか受けません。それでも足りないと軍夫として民間人を雇います。戰地では現地人を日給時給で臨時雇用して使役する事もあります。
□縱列 kolon. column
輜重兵の戰時編制では、中隊を縱列(kolon, column)と呼びます。彈藥縱列、糧食縱列などです。中隊長は縱列長となります。
□隊属輜重 trayn tachiment, attached train
輜重大隊として纏まって行動する他に、他兵科部隊に配属され、行李・段列として働く輜重兵があります。
例えば歩兵中隊では、戰闘中に常に補給が必要な彈藥・器材を運搬する小行李(小型自働貨車4臺分 batal trajn, combat train)、糧秣・被服・陣營具など陣營に必要な物資を運搬する大行李(中型自働貨車1臺分 kamp trayn, field train)、炊事車、兵員輸送車(中型自働貨車8臺分もしくは小型自働貨車16臺分)が、すくなくとも必要ですが、これらの車輌は輜重部隊から配属された輜重輸卒が運轉し、歩兵の行李長の指揮のもとに輜重兵が護衛・監視します。
どの部隊でも必ず配属の輜重兵と輸卒の姿が見られます。
□動物輜重 animal trayn, animal train
自働貨車では通行できない山嶽地帯や森林など特殊な地形では、昔ながらの軍馬を使った輸送を行います。
馬一頭の背に荷物を積載して徒歩の輜重輸卒が轡を取って御していくのを駄馬と云い、險しい地形に適しています。馬では踏破できない最も險しい地形では小型の騾馬が使われます。砂漠では耐久力のある駱駝が使われます。
小型荷馬車に馬1頭を繋いで徒歩の輜重輸卒が轡を取って御していくのは挽馬と云います。舗装の無い平地を行くのに適しています。
中型・大型荷馬車に幌を掛け御者臺に輜重輸卒が座って複數の馬に挽かせて御していくのも挽馬と云いますが、砲彈や架橋材料、電信線建設材料、野戰病院器材など大型の器材を運搬するのに使用されます。2頭立、4頭立、6頭立とあります。
輜重兵は乗馬して隊列に随伴し、指揮・護衛・監視をします。
□水上勤務 sur-akv serv, water carriage services
補助輸卒からなる沖仲仕です。河川や海岸の船着場で、貨物の積載・揚陸を人力で行います。
□建築勤務 konstru serv, constructions services
補助輸卒からなる建築材料屋さんです。建材を運搬するのが主ですが、採集・建築そのものまで手を廣げることがあります。
《輜重兵の特徴》
輜重兵は兵卒であっても輸卒や補助輸卒、軍夫を少なくとも4名指揮しなければならず、また單獨で貨物の受領配給等を行う事があるので、統率力に優れ計數に明るい者でなければ勤まりません。此の為輜重兵は頭脳明晰であるとされており、徴兵檢査の兵科割振の時に高學歴者を優先して輜重兵にし、また小學校高等科卒業であっても學業優秀者が多數を占めているのが特徴です。
輸卒は自働車運轉經驗の有る者が優先して充てられます。
将校は専ら他兵科からの轉科者を以て補充します。第一線での戰闘勤務に耐えられな身體故障を来すと上官が輜重兵への轉科を勧めます。地味な後方兵科なので最初から輜重兵を志願する将校は居ません。
輕騎兵の一種で、軍事警察が任務です。オートバイ、サイドカー、乗用車、装甲車を装備し、要すれば乗馬もします。近衛銃騎兵(gard karabinier, carabinier guards)が先祖です。
各軍に1箇「憲兵隊」があり、聯隊規模です。師團司令部の所在地と、交通の要地に、中隊規模の分隊(分遣隊という意味)を駐屯させ、部隊駐屯地には小規模の分駐所を設けてあります。
憲兵は、海軍の軍事警察も擔當します。海軍には憲兵がいないからです。海上では海兵隊が艦長の命令で艦内警備に任じ、犯罪兵を逮捕しますが、陸に上がると憲兵が引継ぎます。各鎮守府要港部には憲兵分隊が駐屯しています。
また憲兵は、民間人を取調べたり逮捕することができます。警察が有力政治家の圧力により消極的な活動しかしない場合は、憲兵隊が積極的に動いたりします。警察の設置されていない邊境では、憲兵が警察の代りをします。戒厳令が布告されると、戒厳地域では軍政が敷かれ、軍司令官の命令により、憲兵隊が民間人を取締ります。
憲兵隊の拷問は公然の秘密ですが、それが原因で具合の悪くなった人間はいません。憲兵練習所では、ちゃんと拷問の科目まであって、實習もするほどです。
憲兵の制服は襟(えり)が黒で、兵隊どもには「黒襟」と怖れられています。私服の憲兵もいます。警察の刑事と同じで、驛や港にいて、脱走兵を捕まえます。また、民間人と世間話をして、それとなく軍に對する噂や感想を収集します。
戰時には、軍直轄の「野戰憲兵隊」を臨時編成し、戰場警察・交通統制・捕虜収容・監獄運用・情報活動を行います。
《憲兵の特徴》
憲兵は志願制ですが實際は各中隊毎に志願者の割當が来て若し志願者が出ない場合は中隊人事掛が候補者を選んで半強制的に志願させます。上等兵選抜に洩れた者が對象となり、本人も悔し紛れに志願してしまいます。此の為多少捻くれた性質を帯びた兵卒が憲兵に轉科して来ます。
将校は専ら他兵科からの轉科者を以て補充しており、大抵は躯體の故障が原因で第一線での戰闘勤務に耐えられないと判定されると上官が先ず輜重兵への轉科を勧め、それにも耐えられないと判定されると憲兵への轉科を勧めます。憲兵勤務にも耐えられない者は經理部に轉ずる事を勧められます。
最初から憲兵を志願する者は居ないので、地味で人氣の無い兵科とされています。
装甲車