兵役制度を解説します。(ここは下士卒のみの説明で、将校はまた別です)
兵役の説明圖★★ 徴兵制度のあらまし ★★ klasoy de social
「國民皆兵」は、現代の總力戰に必要不可缺な考え方です。
【現役】serv al aktiv
入營(入隊)して本格的訓練を受け、戰時には第一線兵力となる。
17歳で志願現役入隊もできるが、これは早めに兵役を濟ませてしまおうと云う組と、現役を終わればすぐに下士志願をして職業軍人を目指す組がある。少しでも早く入隊していれば定年までの實役年限が長くなって有利だからである。志願者のうち體格の劣るものは海軍を希望するものが多いのは、その徴募基準が視力を除けば陸軍より緩やかなため。
海軍の中でも海兵隊は好戰的な者が好んで入隊する志願兵部隊で、その将校には士官學校出身者がおらず、すべて兵卒からの叩き上げで構成されている。他の陸海軍部隊に志願しても少佐止まりなのに、海兵隊では将軍になるのも夢ではない。
【豫備役】serv al rezerv
現役兵は満期除隊後、5年間を在郷軍人として待機する。部隊を戰時完全編制にする(充員)ための要員。戰争以外の演習や治安出動時にも召集されることがある。豫備役第1〜4年目は、必ず召集され、出動部隊要員・留守部隊基幹要員となる。第5年目は出動部隊に缺員が出た場合ないし新設常備部隊編成時に召集される。
【後備役】serv al dua rezerv
豫備役期間満期後、10年間を第二線在郷軍人として待機する。後備役第1〜4年目は、戰時に召集され、後備部隊要員となる。第5年目以降は後備部隊に缺員が出た場合に召集される。
後備部隊は兵站地の警備に使用され損耗は少ない。
【第一補充兵役】serv al ekstrul
第一乙種合格者をあて、豫後備役兵の不足を補う。出動部隊・留守部隊に大量の缺員が出た場合、第1年目から順次召集される。
開戰初期に大量の損害が出て豫後備役が枯渇した場合、すぐに召集して實戰部隊に投入できる既教育の補充要員がいないと部隊編成が不完全となって戰力に影響するため、日頃から一定數の第一補充兵役者を短期入隊(教育召集)させて既教育兵としておく。從って第一補充兵役には、既教育者と未教育者が混在する。その比率は年度・兵科兵種により異なっている。
【第二補充兵役】serv al dua eksatrul
第二乙種合格者をあて、第一補充兵役が枯渇した場合これを補う。實際には、よほどの大戰争でない限り、戰時でも召集對象とはならない。
【第一國民兵役】serv al milic
後備兵役・第一補充兵役既教育者で満期となった者が編入される。第1年目の一部は、戰時に召集され、國民兵部隊要員となる。第2年目以降は國民兵部隊に缺員が出た場合に召集される。
國民兵部隊は治安の良い占領地や内地の警備に使用されるため損耗は殆どない。
【第二國民兵役】serv al dua milic
上記以外の全ての國民男子のうち、17〜39歳の者(兵役免除者を除く)全員が編入される。事實上は召集對象とはならない。
この兵役まで召集するようになると、部隊が全滅を繰返したか、大規模な軍の臨時擴張があったかしたことになるが、そのいずれも停戰が近い兆候である。
【通知】sciig
戸籍に登録されている男子は全員、20歳になる前に「徴兵検査通達書」を役場の兵事掛から自宅で手渡されます。「何年何月何日何時に本籍地のどこそこの徴兵検査會場(たいてい學校の講堂が使われます)に出頭せよ。鐵道・船舶など交通機關を使う場合は、この通達書を見せれば三等運賃が無料になる。もし出頭しなければ、徴兵忌避罪に問われる。」と云う内容です。それで是が非でも出頭しなければなりません。都會に出ている青年は、休暇を取って本籍のある田舎に戻ってきます。ただし外地に居る者は、特別に、その地で徴兵檢査を受けられます。
【檢査】ekzamen →top
役場の兵事掛に引率されて、徴兵檢査会場に出頭すると、先ず受附に行き、「徴兵檢査通知書」を提出し、檢査書類を貰います。受附は在郷軍人で警防團の制服を着て口喧しく横柄に指示を出します。會場整理も、その人たちがします。會場の雰囲氣は軍隊式で、ピンピン緊張しています。グズグズしていたら怒鳴られます。
裸になって、着物を預け、整列して點呼を受けます。本物の看護長が簡單に身体檢査の心得を説明し、次に聯隊區司令部附の曹長が檢査の種別説明と、檢査後の心得を説明します。ここで聞いただけでは上手く呑み込めないので、事前に市販の「徴兵檢査受驗者心得」などと云うハウツー本を買って讀んでおく必要があります。あるいは軍隊經驗のある人に事情を聞いておくのも手です。
最後に軍醫が出てきて、「病氣があれば、事前に申告せい」と云います。申出ると、看護手が檢査書類に書込みます。
躯體檢査が始まります。順番に躯長・體重、胸囲、手足がちゃんと動くかどうか、指・目・鼻・耳・性器(性病の有無を含む)・肛門(痔疾の有無を含む)など道具は揃っているか、視力(色盲檢査を含む)、聴力、内臓聴診・触診など順番に、それぞれ擔任の軍醫と看護長のところを巡って、検査書類に結果を書込んでもらいます。X線檢査などと云う洒落たものはありません。
病氣があれば、軍醫がちょっと診て、「軍務に差支えない」とか「兵役に耐えず」、「翌年再檢査」などと、所見を書類に書込みます。詳しく檢査するようなことはありません。
【忌避】evit →top
徴兵されるのが嫌だという者は、躯體檢査でゴマカシをやります。藥を飲んでワザと病氣になったり、指をチョン切って鐵砲を撃てなくしたりします。
これを信心すれば兵隊にとられない、と云う「お守り」を賣っているインチキ宗教もあります。
そもそも檢査に出頭せずに、行方不明になってしまう者もあります。そうなると、憲兵隊が捜査に乗出しますが、山奥や邊境の飯場に紛れ込んでしまえば、容易に見つかりっこありません。外地に逃出す手もあります。
なによりも浮浪者には、徴兵檢査通知が届かないので、本人の氣がつかないうちに徴兵忌避犯人になってしまいます。
傳手を頼り檢査擔當の軍醫に内密に頼んで不合格にして貰うと云う手もありますが、此れは相當な禮金が必要になるので、大金持でないと出来ません。
【合格基準】kondich por plenum →top
徴兵檢査の結果は、「甲種」から「戊種」まであります。
合格は「甲種(丈夫で體格よい)」「第一乙種(丈夫だが躯長不足)」「第二乙種(兵卒として多少の缺陥がある・視力異常など)」「丙種(兵卒として著しい缺陥がある・躯體虚弱)」です。「丁種(躯體ないし精神の機能故障)」は不合格です。「戊種(病氣療養中)」は翌年再檢査です。
徴兵檢査種別人員比率
教育程度
甲種 29%、第一乙種 12%、第二乙種 21%、丙種 32%、丁種 7%、戊種 0.2%
讀書算術ヲ為シ得サル者 0.48%
【合格判定】konklud →top
躯體檢査が終わると、徴兵官の机の前に出ます。
檢査書類を見ながら、徴兵官(聯隊區司令官ないし其の代理)は、先ず「甲種合格!」「乙種合格!」「丙種合格!」「丁種不合格!」などと叫んで、書類にバンと大きなゴム印を押します。すると書類には、赤い「マル甲」や「マル丙」の字が入ります。
甲種合格は、現役入隊組です。
甲種より體格・性能の劣る第一乙種合格は、入隊しないで、第一補充兵役要員(戰争が起きた時の、缺員補充用)。さらに體格・性能の劣る第二乙種合格は、第二補充兵役要員(戰争で損耗が激しいときの缺員補充要員)です。實際には餘程の大戰争が起きない限り、入隊する事はありません。
丙種合格は、體が弱くて、野戰生活には耐えられないので、「第二國民兵役」に編入されます。これは、大戰争で軍隊の損耗が激しく(全滅部隊が出たり、動員計畫予定外の臨時編成部隊が作られる時)、後方警備要員が不足した時に國民兵部隊(内地勤務)に召集されますが、普通は事實上の兵役免除と同じです。
丁種不合格は、兵役免除です。兵隊生活にとうてい耐えられない躯體・精神状態なので、一生涯、兵隊にいかなくともよいのです。
【兵種決定】dedic de spec →top
不合格や翌年再檢査組は、そのまま服を着て嬉しさを隠しながら早々に家に歸ります。
合格組は、徴兵官から更に、「歩兵適」とか「騎兵適」と、適する兵種を云われます。
騎兵は索敵のため視力が良くなくてはならず、戰車乗員は狭い戰車の中で動作するので小柄な者が優先されます。乗馬兵は鐙に足が届くように長躯で、輜重兵は一等卒であっても單独で四人の輸卒を率い、倉庫や行李の物品の勘定をしなければならないので頭を使う職業に就いていた者(商賣人など)が選ばれます。砲兵は重い砲車・砲彈を扱うので、大きな體格の頑健な者が選ばれます。工兵には、大工や土工、電氣工など、そのまま技術を生かせる職人が集まります。獵兵は、樵(きこり)、森番、獵師など森林・山嶽住民特有の職業から選ばれます。
本人からも希望を云えますが、そのまま叶えられるとは限りません。
【籤逃れ】elekt per lot →top
各聯隊區(各師團管區に4箇設置、ほぼ1縣に1聯隊區)の徴兵割當は、1箇歩兵聯隊と師團直轄部隊1/4、軍直轄部隊1/8、獨立部隊1/40です。聯隊區は縣にほぼ1箇の割で置かれており、各區は人口・住民の性能にばらつきがあります。各聯隊區には一律に同じ徴兵員數が割當てられますので、區ごとに徴兵の質にばらつきがあります。
同じ甲種合格者でも、全聯隊區が均質と云う譯にはゆきません。
徴兵される側から見れば、入營者の同年齢人口に占める割合が相違します。徴兵は郷土防衛の主旨に沿って運用されているので、このような地方ごとの不公平は問題にされません。邊境の開拓地などが「縣」に昇格すると、その地方は國の補助金や施設投資の面で非常な恩恵を受けるので、人口が小さくて徴兵に不公平がおきようとも、それを補って余りある生活水準の向上と政治的發言力の強化を得られるからです。其の為たいへん協力的です。
合格者が徴兵予定數を上回っておれば、甲種合格者の中から抽選で入營者を決めます(抽籤徴兵署と云う臨時機關で、宝籤のように公正に籤引が實行されます。本人が籤を引くわけではありません)。第一乙種合格者は、抽選までいかずに第一補充兵役に編入されるのが普通です。しかし貧乏な地方で、ろくに食べるものもなく體格が貧弱な青年が多いところでは、甲種合格者が少なく、第一乙種合格者も抽選して入營させられます。また人口が少ない聯隊區は、入營兵に第一乙種合格者が甲種合格者よりも多い事があります。
入營すると、現役に入ったことになります。世間から隔離されて、2年間の兵隊生活を送らなければなりません。甲種合格者で抽選に洩れた者は、入營を免れて、第一乙種合格者と共に第一補充兵役に編入されます。これを「籤逃れ」と云います。つらい軍隊生活をしなくて濟むので、入營者からは羨ましがられます。
【志願】volont →top
徴兵されるのではなく、どこそこに自發的に「志願」したい、と徴兵官に申出れば、それが書類に書留められて、志願先の募兵官(鎮守府の海軍人事部、海兵隊募兵部、陸軍省軍務局人事課募兵班が所管)に廻されます。海軍や海兵隊、航空隊、邊境の守備隊に志願する者がいます。募兵基準を満たしていれば、希望するところに志願兵として入隊できますが、海軍と飛行軍は目がよくなくては入れません。
徴兵検査前に志願する者もいます。17歳から現役兵として入隊できます。下士志望で嚮導團の試驗に落ちて入れなかった者が志願する事があります。
また助卒である少年兵(志願して義勇兵となり聖歌手・笛手・鼓手として入營)のうち退營しても行き場所の無い者が志願します。兵營の中で育ったので世慣れないため、いったん退營して他の職業に就いても、それを辞めて再び志願入營してくる者が多くあります。
入營者で中等學校以上の卒業者のうち豫備士官候補の一年志願兵を希望する者は、豫め願書を出しておきます。資格があるのに出さないと、いちおう徴兵官から理由を聞かれます。一年志願兵は入營中の衣食住兵器などの費用を自瓣する事になってゐる為、それだけの金がない、と答えれば、「そうか」で濟みます。「将校になると、すぐに戰死するから」などと、假にも答えてはなりません。
外國人や外地人が志願してくる事がありますが、その受入部隊は護郷軍に限られています。5年間を護郷軍部隊に入營していると、國籍を取得できるので人氣ですが、受入の可不可は各部隊長の權限に属しています。護郷軍部隊の軍人は現役として扱われますが、正規軍との人事交流はありません。その為、同一人物に於いて護郷軍現役と正規軍兵役のふたつの兵役が重複しているのが普通です。例えば正規軍の豫備役少尉補が退營して護郷軍に入隊すると、護郷軍では現役となり、正規軍では豫備役(定限年齢に達すると後備役・退役となる)であると云う二重の立場を持ちます。
■ 入營 soldatigh → top
【通知】inform
徴兵檢査に甲種合格して入營者の抽選に當たると、本人に「現役兵證書」が役場の兵事掛から手渡されます。その他の兵役になった者も、それぞれ「第一補充兵役證書」と云った證書が貰えます。
聯隊區司令部が徴兵と志願兵の兵種を決定し、配属先を決めると、「入營通知」が役場の兵事掛から来て、「何年何月何日何時に、どこそこの何部隊に出頭せよ。鐵道・船舶など交通機關を使う場合は、この通知書を見せれば三等運賃が無料になる。もし出頭しなければ、徴兵令違叛により徴兵忌避罪に問われる。持参すべき品は次のとおり云々」との内容です。
入營は、どの部隊も、たいてい年の明けた一月十日です。
【徴兵猶予】prokrast de rekrutigh → top
徴兵檢査に合格していても、高等専門學校・大學の生徒・學生は、在校中は入營を延期できます。卒業前に休學して早々と兵役を濟ませてしまう者あり、わざと落第して入營を延ばす者あり、それぞれの事情によります。
また公職に就いている者も、辞職するまでは入營が猶豫されます。村會から國會に至るまでの議員や、小區長・村長から市長までの地方公共團体の首長、官公吏(役人、聖職者、國公立學校教職員、警官、半官半民會社の重役・幹部社員など)は、やはり辞職するまで入營が延期されます。しかし辞職するまでに、大抵の者は40歳の現役定限年齢を過ぎてしまい、兵役免除となり、結局、入營せずじまいに終わります。40歳前に辞職しても、入營せずに未教育第一補充兵役に編入となってしまいます。
【入營準備】prepar por soldatigh → top
入營先に持参するのは、入營通知、現役兵適任證書、手帳鉛筆と平服を送返す荷造用の袋くらいです。
驛で入營通知を見せると、三等運賃が無料になります。二等車以上に乗りたい時は、自前で差額を拂います。もちろん食堂も自前です。
地方によっては、入營祝の宴會を開くところもあります。また在郷軍人会が音頭をとって、入營者が隊列を組んで兵營まで行進するところもあります。
珍しい食品や酒類を兵營に持参して、古参兵に進呈するところもあります。
【入営】soldatigh → top
營門の前で待っていると、指定刻限に下士が出てきて、中に入るように云います。ゾロゾロと營庭(兵營のグラウンド)に引率されて行きます。適當に並んで待っていると、下士が大聲で氏名を呼んで所属中隊を指定します。中隊ごとに受附の机が並んでいて、そこの上等兵に入營通知を差出し、「第何中隊」と書いた立看板の處に並びます。中隊の下士が、また氏名を呼んで、所属の内務班を指定します。
受附が全部終わると、各内務班から出迎えの初年兵係上等兵が引率して、兵舎に入ります。
先ず中隊被服庫で、軍服・軍帽・軍靴・下着など必要な被服を貰い、内務班に案内されます。
内務班で、豫め割當ててある自分の寝臺で、軍服に着替え、平服は荷造して宛名を書き、返送するよう中隊事務室に預けます。
「被服の體に合わないものは申し出ろ」と初年兵掛上等兵が云うので、申し出ると、換えてくれます。中隊によっては、何も云わないので、こちらから申し出ると「馬鹿者、服に體を合わせるんだ」と怒鳴られる處もあります。
隣の寝臺には古参兵がいて、それが「戰友」となります。戰友も初年兵掛も班長も、いろいろコマゴマと、くどいほど親切に教えてくれます。これは「お客様扱い」と云って、内務班の初年兵教育の第一歩です。(班によって違いますが、1週間程度たつと上級者の態度が示し合わせていたようにガラリと變り、一度説明されてある事を再び質問でもしようものなら、
「既に、それは説明してあるはずだ。何を聞いておったのだ、馬鹿者!」と厳しく叱責されます。
また既に説明された事に就いて正しく答えられないと、
「あれだけ親切に説明したのに何を聴いておったのだ、馬鹿者」と叱責されます。)
マゴマゴしているうちに夕方になります。食事は軍隊としては、ご馳走が出ます。しかし娑婆(軍隊以外の世間を、こう呼びます)で贅沢をしていた者には、質量ともに喉を通りません。貧乏をして、食うや食わずだった者は喜んで平らげます。こんな御馳走を生まれてから一度も食べた事が無い、と云う者もいます。内務班では、あらゆる社会階層の者がゴタ混ぜになって生活するので、お互いの生活環境の落差に、いまさらながら驚くのです。
【即日帰郷】heymreven en la sam tag → top
入營当日に簡單な躯體檢査を受けます。軍醫が「故障のある者は申し出ろ」と云って、病氣や故障のある者を診察し、今後の新兵訓練に耐えられないと診断されると、「即日帰郷」となって軍服を返納し、もとの平服になって家に歸ります。
こうした者が必ず幾人か出るため、新兵は定員より多めに徴集します。
【現役期間】
新兵が兵營で訓練を受けるのは1年間です。この時は「初年兵」と呼ばれます。ひと目でそれと分かるように、腕や胸に「未訓練兵」の識別章(部隊によって圖柄は異なる)をつけます2年目は「2年兵」或いは「古年次兵」「古兵」「故参兵」(古参とは書かない場合が多い)として、初年兵の指導をはじめ、様々な係に任命されて働きます。
歩兵では、1〜3月を1期(基礎教練:敬禮・行進の仕方から歩兵銃の撃方、銃剱の使い方まで、分隊・小隊教練)、4〜6月を2期(銃剱術・射撃術の練磨、機關銃・擲彈筒使用方、瓦斯防護・應急看護術の習得、衛兵勤務、中隊・大隊教練)、7〜10月を3期(游泳・漕艇術、對戰車擲彈術、聯隊・旅團教練)、11月を師團對抗演習(秋季演習)にあてます。(しかし平時・戦時、兵科兵種、によって教育期間と内容には相違があり、また同兵種の部隊でも、部隊長の裁量によって教育計畫は細部が異なります。例えば歩兵では、平時の補充兵の教育召集が3ヶ月、戰時の速成教育では最短2週間です。北方の聯隊は凍傷豫防のため耐寒訓練を科目に入れますし、山嶽地方の聯隊は攀山(とざん)やスキーも教えます。砲兵では、1期が終了すると、兵卒は觀測・信號・砲手・馭者に分けられ、それぞれ専門の訓練に進みます。)
1期が終わった段階で、中隊の人事掛特務曹長が初年兵に特業を割振ります。斥候卒、乗馬傳令卒、喇叭卒、信號卒、暗號卒、傳鳩卒、軍犬卒、炊事卒、縫工卒、靴工卒、銃工卒、看護卒、磨工卒などです。成績の良い初年兵は特業に就かずに、上等兵候補者となり、分隊長教育を受けます。2年兵が歸休除隊した12月に幾度かに分けて候補者の中から上等兵が選抜されます。最初の12月1日付で上等兵を命ぜられた者は「一選抜」と云って、大變に優秀者な兵隊とみなされます。缺員となっている下士の代役をする伍長勤務となり、除隊後に豫備役で召集されると必ず伍長を命ぜられます(志願にあらざる下士)。「二選抜」の上等兵は、人事掛・兵器掛・被服掛など中隊事務の助手となります。候補者は定員より多めに選びますので、選抜に洩れた者は、さらに年末までに成績順で上等兵に選抜されます。最後まで選抜に洩れた者は、悔し紛れに炊事手、工手、看護手、憲兵など他兵科他部を志願して、それぞれ専門の實施學校に分遣され特業の上等兵教育を受けます。
2年目の1月には、既に上等兵に進級している者以外は全員が「一等卒」になります。一等卒も真面目に勤務すれば、成績上位の者が満期除隊の時「上等兵」に進級します。ことに人命救助や火災豫防に功績があると、聯隊長の特別命令により「上等兵」に進級します。
2年兵や得業兵は、それぞれ勤務に就いて、昼間は内務班におりません。ことに炊事卒は、夜明前から炊事場に出て、食事もそこで濟ませ、夜遅く歸ってくるので、顔を見た事が無い初年兵すらいます。
2年目が終わると、めでたく2年間の現役期間が満期(終了)となって、退營(除隊)します。11月の秋季演習が終わると、二年兵全員が歸休を命ぜられ、早々に家に歸ります。年末までは自宅待機となりますが、實質的な満期除隊です。これは部隊の經費節減にも寄與します。
【歸休】 → top
除隊は、實際には現役期間が満了する前の、2年目の11月末になりますので、家に歸っている12月中は「歸休兵」として、まだ現役にあるものと形式上されています。
また雑卒(輜重輸卒、擔架卒など)は、教育期間が數ヶ月と短いので、現役1年目の半ばで除隊しますが、残りの現役期間は「歸休」と呼ばれて、兵舎にいる代わりに家にいて何時でも部隊に驅けつけることができるように待機することになっています。
【下士志願】→ top
軍隊に残って下士になりたければ、中隊の人事掛特務曹長に餘め申出ておくと、下士候補者として教導團(歩兵下士學校)や各兵科實施學校の下士候補生教育課程で下士教育を受けられます。
現役期間満期後も豫備役とはならず、下士として引続き現役に留り、3年ごとに志願を更新して、伍長、軍曹、曹長と進級していきます。しかし餘りにも成績(素行を含めて)が悪いと進級が遅くなり、志願を更新しても受附けられず、やむなく退營(除隊)する事があります。
除隊下士は、豫備役に編入されます。下士の現役定限年齢40歳を過ぎると兵役免除退役となります。戰争になると豫備役下士は各階級ごとに若い順から召集されます。召集を待たずに入隊したければ、豫備役下士は志願して入營する事ができます。退役下士は義勇兵として志願できます。いずれも現役復歸はできません。
現役下士と特務曹長の定年(現役定限年齢)は、40歳です。それ以上軍隊に残りたければ、成績を良くして准士官の准尉になるか、若いうちに少尉候補者試驗を受けて士官學校に少尉候補者として派遣され、そこを卒業して少尉になります。すると定年は45歳以上(階級により異なる)に延びるので、もう少し軍隊の飯が食えるわけです。戰争で大量の缺員ができたり、手柄を立てると、中尉以上に進級して定年はさらに延長されます。
【豫後備役】 → top
現役終了後ただちに5年間の「豫備役」編入となり、豫備役期間が終了すると、さらに10年間の「後備役」に編入されます。後備役期間が終了すると、「第一國民兵役」に編入されます。40歳になると、「兵役免除」となります。
平時は戰時編成定員の半分しか兵隊が兵營にいません。戰争になると、動員が發令され、先ず「豫備役」の若い方から4年分が「充員召集」されます。兵營にいる2年兵と豫備役応召者3年分で戰時定員を満たし、部隊は完全編成となって出征します。初年兵は教育中なので、兵營に補充隊要員として残します。また出征しない豫備役兵1年分は初年兵の教育要員および留守隊運用の要員として兵營に残ります。
また動員部隊は現役出征部隊の他に、臨時編成の「獨立混成旅團」「後備歩兵旅團」「衛生隊」「軍兵站監部隷下諸部隊」など軍直轄部隊の一部を他聯隊と分擔して編成しますので、その要員として「後備役」にある者のうち、若い方から「臨時召集」します。
動員部隊に缺員が出た時は、残りの「豫備役」「後備役」の若い方から順次、「充員召集」をかけて入隊させ、穴を埋めます。
【志願にあらざる下士】 → top
戰争になると、不足する下士を補充するため、召集した豫後備役・補充兵役・國民兵役の兵卒の中から適任者を伍長にし、順次、軍曹、曹長と進級させていきます。下士に進級するのは軍の命令によるので、志願しなくとも(下士になるのはイヤだと云っても)無理矢理ならされてしまいます。辞退は許されません。
復員(戰争が終わって戰時編成が平時編成に戻り、定員が縮小され、召集解除になる)時に、志願にあらざる下士は除隊します。
【補充兵役】 → top
現役で入營しなかった徴兵檢査合格者は、「補充兵役」(12年間)に編入されます。動員部隊の缺員を埋めようにも、既に「豫備役」「後備役」の未召集者が残っていない時は、この補充兵役から「充員召集」します。入營させて短期の促成教育を施して部隊に編入します。教育機關は兵種によって異なりますが、歩兵で最長3ヶ月です。戰場で大量の損害を被った部隊を擔當する聯隊區では、最短2週間の訓練だけで、補充兵を戰場に送り出します。残りの教育は戰地の兵站地に駐屯する補充兵教育隊や前線の実戰部隊で濟まします。
内地部隊に於いて未教育の「第一補充兵役」を短期間(歩兵で3ヶ月)入營させ、基礎教育を施し既教育にするのが「教育召集」です。
補充兵役終了後は、「國民兵役」に編入されます。第一補充兵役終了の既教育者は「第一國民兵役」に、未教育の第一補充兵役終了者と總ての第二補充兵役終了者は「第二國民兵役」に入ります。
【第一國民兵役】 → top
既教育の老兵が服する兵役です。
後備役終了者および既教育の補充兵役終了者は、第一國民兵役に編入されます。
動員部隊は、現役出征部隊・後備出征部隊の他に、内地守備用に「國民兵部隊」を編成する事があります。
この要員として、第一國民兵役の若い方から順に「臨時召集」します。
【第二國民兵役】 → top
國民皆兵の主旨により、實際には生涯、兵隊生活とは關係の無い男子も、一應、服役した形にしておくための兵役です。
現役、豫後備役、補充兵役、第一國民兵役以外の17〜39歳男子國民は、總て「第二國民兵役」に編入されます。
「國民兵部隊」に缺員が生じたときには、若い方から順に「臨時召集」します。しかし、この時は、もう敗戰間近かの徹底抗戰時期です。
【免役】 → top
40歳を過ぎると、兵役免除になります。また躯體・精神に著しい故障があって、兵役に耐えられないと判定された者は、40歳前でも兵役免除になります。
しかし志願した場合や職業軍人は、また別なので、戰時後方には片目片腕の補充隊長がいたりします。
【義勇志願】 → top
兵役にない者は、志願によって入隊できます。17歳未満の少年兵、40歳以上の免役者、女子が入隊しているのは、志願したからです。
外國人の志願者は選考の後、義勇兵として入隊させます。護郷軍の兵士には「兵役ニ在ラサル」者、即ち正規軍の兵役免除者(16歳以下の者、40歳以上の者)や外國人の志願者がいます。
敵軍が我が領土内に進入した時は、郷土防衛のために義勇隊を臨時に編成します。義勇隊は護郷軍・憲兵・警察・警防團が連合して編成されたものですが、その中の警防團の團員は地元の一家から一人を志願させる事になっています。男女老若・身體故障を問わず志願することができます。志願と云っても、この場合は強制的なもので、市區町村の兵事部署が豫め志願者を名簿にして把握しています。故障のため志願ができない時は、代りの人を雇って出てもらうことができます。 → top
應召兵百態
徒手教練
銃劔術の教練